保護命令とはどのようなものか
保護命令は、裁判所から加害者に対して発令されるもので、被害者の身辺へのつきまといや、被害者の住居、職場等での徘徊が6ヶ月間禁止されたり、2か月間住居からの退去が命じられたりします。保護命令に違反した場合、即座に刑事罰の対象になります。そして、かなりの確率で逮捕され身柄を捜査機関に拘束されます。
どのようなときに保護命令が発令されるか
保護命令は、
①過去に身体に対する暴力や生命等に対する脅迫を受けており
②現在も更なる身体に対する暴力により、生命や身体に重大な危害を受けるおそれが大きいときに、発令されます。
過去に一度も身体に対する暴力や生命等に対する脅迫がなかった場合や、過去には暴力や脅迫があったものの現在は危険がなさそうという場合には、発令されません。
保護命令の手続の流れ
保護命令を申し立てるにあたっては、
①相手方の住所地を管轄する地方裁判所、
②申立人の住所または居所の所在地を管轄する地方裁判所、
③暴力等が行われた地を管轄する地方裁判所、
のいずれかの地方裁判所に保護命令を申し立てます。
すると、申立書が相手方に送達される前に、裁判官の前で事情を説明する機会が設けられます。なお、この事情説明の段階で、相手方の弁解を聞くまでもなく保護命令の発令は難しそうであると裁判官が判断した場合、取下げの打診をされます。相手方に保護命令の申立書が届いた挙句に保護命令が発令されないとなると、かえって相手方を怒らせるだけの結果になりかねないからです。
申立人の事情説明後、裁判所は相手方を呼び出し、相手方からの弁解を確認します。そして、相手方からの弁解を聞いた上で保護命令発令の理由ありと判断したり、相手方が裁判所に出頭しなかったりした場合には、保護命令を発令します。一方、相手方の弁解を踏まえて保護命令不発令の可能性ありと判断した場合には、申立人に主張立証の補充を求めたり取下げの打診をしたりします。
保護命令発令要件の立証について
保護命令は現在及び将来の危険を排除するための手続です。一般の刑事事件の場合は「疑わしきは被告人の利益に」という原則がありますが、保護命令の場合はそのような厳しい事実認定や法律判断はされずに発令がなされます。そのため、相手方からしたら、実際は暴力を振るっていなかったり、正当防衛だったりしたのに、十分な調査がされないまま保護命令が発令されるというケースもないわけではありません。また、保護命令はそこまで厳格ではない調査のもとに発令されるので、保護命令が発令したという一事をもってその後の離婚争訟が有利に進展するというわけではありません。あくまで保護命令は自分や子供、関係者の安全を確保するためのものです。