慰謝料の原因とは
p>民法第709条は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定めています。また、民法710条は「他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。」とも定めています。多少の正確さを犠牲にした上で噛み砕いて説明をすると、
①わざとまたは不注意によって、酷いことをして、他者に損害を与えた場合は損害を弁償しなければならない
②金銭的な損害だけではなく、体を傷つけたり名誉を傷つけたりした場合も損害賠償をしなければならない、
という規定です。
なお、直接条文に記載されていないものの、解釈上必要とされている要件も含めて説明しています。これを「不法行為」といいます。
そして、民法770条1項の定める離婚原因となるような行為は、多くの場合は不法行為に該当します。そして、不法行為によって婚姻関係を破綻させたことや、配偶者の心身を傷つけたりしたことについて、損害賠償をしなければならないというのが、離婚慰謝料の性質です。
DV・モラルハラスメントに対する慰謝料請求
慰謝料の理屈からすると、DV・モラルハラスメントの被害があった場合、当然慰謝料請求ができるようにも思えます。
しかしながら、DV・モラルハラスメントは家庭内の密室で起きるものであり、証拠を押さえるのが難しいです。特に、一つ一つは激しくないけれども小さなDV・モラルハラスメントが継続的に行われるパターン場合、DV・モラルハラスメント被害を裁判官に説明することはとても困難です。
なんとかDV・モラルハラスメントを立証できたとしても、慰謝料の支払いは数十万円~百数十万円程度までしか認められないことが多いです。数百万円程度の慰謝料の支払いが命じられるとなると、激しい暴力によって大怪我を負って写真と診断書があるとか、とても酷い暴言の録音が多数あるといったような場合といった特殊なケースに限られます。
その上、DV・モラルハラスメント加害者への慰謝料請求をするとなると、加害者はあの手この手で争ってくるので、被害者にとって精神的負担は相当あります。
そう考えると、DV・モラルハラスメントの被害を受けたので、しっかりと高額な慰謝料を回収しようという考えは、あまり得策ではありません。
DV・モラルハラスメントの慰謝料を請求するとしたら
①証拠は十分に揃っているので、数百万円と言わなくても百数十万円程度は期待できそうである
②慰謝料認容額が少額になってもいいから、少しでも金銭を回収したい
③DV・モラルハラスメント加害者が離婚自体を争ってきているので、離婚事由の主張立証に付随して慰謝料も請求する、
といったケースが考えられます。
DV・モラルハラスメント被害の主張立証が難しく、また被害者自身は早期解決を望んでいるケースでは、慰謝料請求にこだわらない方が得策でしょう。
DV・モラルハラスメントから慰謝料を請求された場合
DV・モラルハラスメント加害者の中には、逆に慰謝料を請求してくる人も少なくありません。離婚の紛争中に慰謝料を請求するという主張をすることもあれば、同居中に、「離婚になったら高額の慰謝料を請求する」と言って、高額な慰謝料を支払わないといけないなら離婚できないとDV・モラルハラスメント被害者に思わせて支配をより強固なものにしようとすることもあります。
しかしながら、多くの場合、DV・モラルハラスメント加害者により慰謝料請求は法律的な理由がなく、裁判になっても請求が認容されません。DV・モラルハラスメント加害者の根拠のない言い分に怯えないでください。