もくじ
DV・モラルハラスメント被害者の不貞
DV・モラルハラスメントの被害者が、精神的苦痛の軽減を加害者以外の異性に求めてしまうというケースもないわけではありません。しかし、このような自体が生じてしまった場合、以下のように離婚事件の処理にあたってさまざまな困難が伴います。
現在離婚を考えているDV・モラルハラスメント被害者は、離婚が成立するまで(または離婚紛争を伴う別居が相当長期間経過するまで)は別の異性と男女関係を持つことを控えるようお勧めします。
不貞をしたDV・モラルハラスメント被害者による離婚請求
婚姻を破綻させた側(一方的に暴力を振るった、別の者と不貞関係を持った等)が、婚姻が破綻したのだから離婚させろと言っても、基本的に離婚は認められません。このような、破綻原因を作った側を、「有責配偶者」と言います。相当長期間(7~8年以上)別居をしておりかつ未成年の子がいないというような特殊な事情がない限り、有責配偶者からの離婚請求は認められません。
DV・モラルハラスメントによって婚姻が破綻したのであり、不貞は婚姻関係が破綻した後になされたものだということが、理屈の上では成り立ちます。しかし、家庭内の密室で起きるDV・モラルハラスメントは、立証が極めて困難です。一方、不貞はメールやSNSのデータ,探偵の調査報告によって動かぬ証拠が掴まれることがあります。
すなわち,DV・モラルハラスメント被害は立証できないため存在しないものと扱われ,不貞のみが立証されてしまうというケースが生じ得ます。そうなると,本当はDV・モラルハラスメントの被害者であったのに,裁判上は単なる不貞をした有責配偶者と扱われてしまい,離婚成立のために相当長期間の別居が必要となってしまいます。
このように不利な状況になってしまうので,DV・モラルハラスメント被害者であっても,離婚成立まで(または離婚紛争を伴う別居が相当長期間経過するまで)は,別の異性と男女関係を持たない方がよいでしょう。もっとも,既に関係を持ってしまい,かつDV・モラルハラスメント加害者にそれがばれてしまった場合は,粘り強くDV・モラルハラスメント被害を主張立証したり,相手方が根負けするのを待ったりするしかありません。
不貞をしたDV・モラルハラスメント被害者による婚姻費用分担請求
婚姻費用は基本的にはどちらが有責配偶者であっても支払額に変化はないのですが、請求者側が不貞をしており、かつその事実に争いがないまたは証拠上明白である場合には、婚姻費用の請求が信義則に反し認められないとされます。ただし、請求者が未成年者を扶養している場合、養育費相当額の支払いは命じられます。
ですので、DV・モラルハラスメント被害者が本来は婚姻費用を請求できる立場にあっても、不貞をしたことが原因で婚姻費用の請求が認められなくなってしまう可能性があります。証拠の少ないDV・モラルハラスメント事案において婚姻費用の果たす役割は大きいところ、これが有効に使えないとなると、離婚に大きな困難が伴います。
DV・モラルハラスメント加害者からの不貞慰謝料請求
また、DV・モラルハラスメント加害者から不貞の慰謝料請求がなされることもあります。
DV・モラルハラスメントによって婚姻が破綻したのであり、不貞が破綻した後になされたものだから、慰謝料請求は認められないということが、理屈の上では成り立ちます。しかし、家庭内の密室で起きるDV・モラルハラスメントは、立証が極めて困難です。
一方、不貞はメールやSNSのデータ,探偵の調査報告によって動かぬ証拠が掴まれることがあります。
すなわち,DV・モラルハラスメント被害は立証できないため存在しないものと扱われ,不貞のみが立証されてしまうというケースが生じ得ます。そうなると,本当はDV・モラルハラスメントの被害者であったのに,裁判上は単に不貞がなされただけ扱われてしまい,不貞慰謝料請求はしっかり認められてしまうという危険性があります。
DV・モラルハラスメント加害者から不貞の言いがかりをつけられた場合
ところで,DV・モラルハラスメント加害者の中には,配偶者は別に不貞をしているわけではないのに,被害者が不貞をしていると邪推してくる者もいます。この場合,DV・モラルハラスメント加害者がどのような根拠を持ってそのような主張をしてきたかが問題となります。
第三者の目から見ても明らかに不貞をしていると思われるような事情があった場合には,仮に実際には不貞をしていなかったとしても,裁判上は不貞をしたものとして扱われてしまいます。
その一方で,第三者の目から見たら不貞をしているとはとても思えないのに,DV・モラルハラスメント加害者が言いがかりをつけているだけの場合は,紛争の舞台を調停や訴訟といった法的手続の場に移してしまえばいいでしょう。