DV・モラルハラスメント
DV・モラルハラスメントとは
ドメスティックバイオレンス(DV)とは、現在または元の夫婦・交際相手といった親密な関係にある者の間で、一方のパートナーを、さまざまな力を用いて支配する関係です。
この暴力の形態にはさまざまなものがあります。直接殴る蹴るといった身体的暴力、罵る、脅す、人格否定をするといった精神的暴力、 仕事に就かせない、生活費を渡さない、収入を全て取り上げるといった経済的暴力、人との交際や行動範囲を制限したり厳しく監視したりするといった 社会的暴力、望まない性行為の強要や避妊への非協力といった性的暴力といった類型があります。精神的暴力は、 モラルハラスメントという言葉でも知られています。
これらの暴力は、被害者を支配し、意のままに従わせるために振るわれます。パートナーを支配するためにさまざまな力を行使することが、DVの本質です 。直接殴る蹴るといったことをしなくても、それ以外の力を行使することでパートナーを従わせることが出来れば、そして被害者が加害者を恐れて服従していれば、 それはDVです。逆に、対等の立場で喧嘩をしている場合、あるいは追い詰められて抵抗したような場合には、支配関係に基づく暴力とは言えないので、 DVと評価すべきではありません。
DVの被害者は、日々暴力に晒されることによって、少しずつ精神をすり減らしていきます。どれだけ気丈な人であっても、毎日暴力に晒され続けると、 いつかは耐えられなくなります。そして被害者は、加害者の爆発を恐れて、日々加害者の顔色を見て、加害者を刺激しないように、怒らせないように生活するようになります。
DVについてのよくある誤解
今日では、DVという言葉こそ認知されるようになりました。しかし、中身が伴わないまま言葉だけが独り歩きしてしまい、誤解も多くなっています。
まず、何よりも大きな誤解は、殴る蹴るといった身体的暴力だけがDVである、身体的暴力があれば即DVになるという考えです。 この誤解が原因で、加害者は直接殴る蹴るをしなければ問題ないんだとばかりに、モラルハラスメントを積極的に行う、 被害者は自分がDV被害を受けていることにすら気付かない、 被害者が必至で抵抗したら加害者から逆に「お前がDVを行っている」と責め立てられるといったことが起きてしまっています。
また、大きな誤解として、加害者はいかにも暴力団やチンピラっぽい、いかにも乱暴者そうな人であるという考えもあります。 普通の会社員や公務員はもちろんのこと、エリートサラリーマン、会社経営者、医師といった社会的な地位が高い人の中にも、DV加害者は存在します。また、加害者は, いわゆる「外面のよいタイプ」の人が多く、家庭で被害者に見せている顔と職場や隣人に見せている顔が全く違うということも少なくありません。
また、加害者が大げさに謝罪や反省の態度を示したり、機嫌がいいときはとても魅力的な対応をしたりすることで、 加害者はいい人なんだと被害者が誤解してしまうこともあります。しかし、加害者にとっては、謝罪や反省、優しい態度も、 被害者を支配するための手段に過ぎません。加害者は被害者を支配するために、鞭(DV)だけではなく飴(謝罪や優しい態度)を使っているだけなのです。
そして被害者によく向けられる誤解として、苦しいのであればすぐに逃げればいいのに、 逃げないんだからそれほど苦しくなかったのではないか、というものがあります。しかしDVは、加害者が被害者を支配するために行われるものです。 被害者は日々暴力に晒され、気力と判断力を奪われていきます。また、加害者から逃げるということは、加害者の支配から脱するということです。 すなわち、加害者が最も警戒することです。被害者が逃げようとする素振りを見せると加害者は怒りを爆発させます。被害者は、加害者の顔色を伺い、 逃げることが出来なくなるのです。
DV・モラハラ加害者の特徴
DV・モラルハラスメントは、パートナーを支配するために行われます。もっとも、知り合った直後にいきなり暴力的な本性を見せては、相手はすぐに逃げてしまいます。 加害者は、結婚・妊娠・出産といった大きな節目を終えて被害者が逃げにくくなってから、少しずつ本性を出してきます(早いタイプなら、 肉体関係を持ったあたりで本性を出してきます)。また、被害者の中には、執拗なDVによって精神をすり減らされ、 自分自身が被害者であることすらわからなくなっている人もいます。そこで、DV・モラルハラスメント加害者の特徴を簡単に列挙します。
以前の交際相手を見下すように話す
パートナーや立場が低い人を見下す
パートナーが望まないようなことをパートナーのためだと主張して行い、押し付けがましく恩を着せる
パートナーを束縛、コントロールする
どんなことでも他人のせいにする
性行為を強要してくる
怒ったときにパートナーを威嚇する
自分のやっていることとパートナーに求めることがダブルスタンダードである
他人がいるところではパートナーと接する態度が違う。
知り合ってすぐに深い関係になろうとする。
等です。
もっとも、これらが一つ当てはまったら即DV加害者の気質の持ち主ということにはなりませんし、 逆に一つでも当てはまらなければDV加害者の気質がないということにもなりません。
DV・モラハラ対応のポイント
DV・モラルハラスメントに対応するためには、優先順位を決めることが何よりも重要です。
たとえば、加害者のことを考えただけで動悸を感じるくらいに深刻な被害を受けている人であれば、 早期に離婚を成立させて加害者との関わりを断つことを最優先にすべきでしょう。幸いにして精神的な余裕が残った状態で支配から抜け出すことが出来た人なら、 やられっぱなしでは済まないということでそれなりの金銭を回収することを目指してみてもよいでしょう。裁判で争い続けることがどれだけ苦痛であっても、 子どもの親権だけは絶対に譲れないという母親は多いです。
DV・モラルハラスメントが絡む離婚は、離婚を争う中で被害者は加害者にさらに傷つけられるという二次被害が発生する危険があります。 そのためにも、優先順位を慎重に見極めて行動に移る必要があります。